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かわさきマイスター紹介

内装仕上技能士 伊原 正男さん

厳しい徒弟修業を経験した熟達の技と磨かれた人間性

伊原さんは、襖・障子・屏風・掛け軸といった従来の表具の仕事から、いち早く一般住宅の洋風化に対応したインテリア内装工事を手掛けることになり、この分野の熟練度では業界で先駆者の1人となっています。また、年端もいかない頃から親方家族とともに生活し、人世全般にわたる修業を積んだことは、人生の大きな財産になったといいます。
プロフィール
伊原 正男 (いはら まさお)さん

中学卒業後、7年間の住み込みの徒弟修業の中で、表装、襖、内装全般の仕事を行い技術を磨く。内装仕上の需要が和風から洋風へと変化する時代の中で、当初から壁装工事を重視し、たたみ皺が出易い自然素材・エコウォールなどの皺を防ぐ、丸めだたみ工法を発案するなど、高い技術・技能を発揮している。業界では大手壁装ブランドメーカーの技術顧問を経験、同業組合の中では重要な役割を担っている。技の本質を正しく言葉で表現する巧みな話術にて、全国各地で講師を務め、職人技の本質を実技だけでなく、話術を交えて伝える活動をしている。平成23年度認定かわさきマイスター。川崎区在住 有限会社インテリアいはら取締役。
これは、伊原さんの技能を紹介する動画です。クリックしてご覧ください。

伊原さんについて教えてください

始めるきっかけは何でしたか?

この世界に入ったのは、母子家庭で育ったこともあって早く社会に出て母を楽にしてあげたかったこと、また机の上の勉強よりも、という考えがありました。本当は板前になりたかったのですが、小料理屋をやっていて三味線など芸事好きな母親は、息子の弱点を見抜いていたのでしょう、私を硬い表具師の修業に出したのだと思います。自分の意志で進んだ道ではないのですが、今は天職と実感することができ、今更ながら母の偉大さを思うと共に感謝の念が湧いてきます。

やっていて一番面白いと感じることは何ですか?

いつも何か新しい体験ができることだと思います。お客さんの好み、壁装する場所の特性、多様化した材料、張る技法など吟味し、それに工期、予算という制約条件を加えての最適な仕事は、同じものは一つとしてなく、その都度創造的なものと思います。そしてお客様に「いい仕事をしてくれた」と満足頂いた時にはこの仕事をやっていて本当によかったと思います。特に仕事で大事なのは、お客様の好みや趣味、性格をとらえて懐に入る、そうすれば信頼と期待感を得ることができます。これは修業時代に学んだ財産で、これこそが仕事の面白さに通ずる要だと思っています。

長年、継続して技能研鑽に努めることが出来たのはなぜですか? (他の道に行こうと思わなかったですか?)

立派に一人前になって母親を喜ばせたい一心でやってきたからだと思います。修業を始めて最初の2年は家にも帰りませんでした。母や姉は「かわいそうなことをしたのではないか」と泣いていたそうです。また、高校に進学した友達に差をつけたいという負けん気もあり、途中で辞めることはは絶対にできませんでした。母親は私が18歳の時48歳で亡くなりました。この仕事を続けたことを母も喜んでいると確信しています。ただ、十分親孝行ができなかったことが悔やまれます。もう一つ、修業に出るとき母から「先ず親方を好きになりなさい。好きになれば可愛がってくれる」と言われ、努力を重ねる中で仕事も好きになりました。

苦労したことはありますか?

考え方にもよるのでしょうが、幸いにも私は深刻な苦労というものを感じたことがないように思います。敢えて思い出せば修業時の話になります。職人は技能が全てで、親切に向こうから教えてくれることは稀です。私はおしゃべりでおっちょこちょい、生意気に見えたようです。叱られることが多々ありました。よく反省をさせられました。
また、仕事は何でもそうでしょうが予算と期間という条件のもとに行うものですが、条件に従うあまり、やむを得ず自分の基準を下回る仕事で終わったときの不満足感は後にのこります。それが苦労といえば苦労かもしれません。

自分が誇れる、自信のある卓越した技能を教えてください

内装工事の仕事の工程は次のようになります。
1 現場調査 
2 物決め 壁装素材・工事用具
3 採寸・デザイン決め
4 下地処理
5 壁紙の裁断
6 糊付け
7 張り上げ
この中で神経を使うのが、下地処理と糊付けです。この2つが出来上がりの良し悪しの決め手となります。
壁紙を貼る前にはパテを塗りこみ<br>凸凹を平らにしていきます。
壁紙を貼る前にはパテを塗りこみ
凸凹を平らにしていきます。
石膏ボード、ベニヤ、板張りなどの下地は何枚かの板をつないだものですが、壁紙を張る前に継ぎ目(目地)やひずみを埋めて凹凸のないように真平らにしなければなりません。その下地処理がいい加減なものだと壁紙を張った後凹凸が目立ち、最初からやり直しとなります。
下地処理は石膏を水で溶いたものを大小のパテベラを駆使して塗り上げるのですが、これを勘による手作業でやります。曲面を持つ壁の場合もっと難しくなります。経験がものをいう作業です。
少しずつ折りたたみながら<br>糊付けをしていく<br>丸めだたみ工法
少しずつ折りたたみながら
糊付けをしていく
丸めだたみ工法
もう一つは糊付けです。糊は水分を含んでいるため壁紙に糊を塗って数分間は壁紙が伸び(90cmにつき約2%)、貼り付けた後に伸びると後伸び現象でしわになります。そのため糊付けの後、一定の時間置いて(オープンタイム)乾かしてから張るのですが、これも季節、気温・湿度によってオープンタイムが微妙に違ってきます。張って乾いた後の過不足のない、ピッタリ仕上げることが壁装仕事の絶対条件と言えます。
また、オープンタイム中の糊付けされた壁紙の置き方が問題になります。平にして置くことは現場ではスペースもなく不可能に近いことです。そこで考案されたのが「まるだたみ方式」です。これは丸く畳んでスペースをとらぬよう立てて置くもので、畳んだ時の山折りと谷折りに筋目がつかぬように、また当然糊面と表地が合わないようにして丸くおさめる畳み方です。或る職人さんからヒントを得て私が改良した方法で、くせがつきやすい素材には非常に有効な方法です。
また最近では、壁装素材の90パーセントはビニール素材ですが、たまに高級な織物素材の需要があります。この仕事はなかなか難しく、特に若い人には経験が浅く苦手な人が多いようですが、私はこの分野も多くの経験を持っているのでよく相談に乗っています。 

ものづくりについて教えてください

ものづくりの魅力を教えてください

専門分野のプロとして、自分の意向で主体的に仕事ができることでしょうか。自分からアイディアを出し、それが理解され、創り上げた後、お客様に満足頂いた時は本当に幸せな気分になります。前にも申しましたが、個々の仕事が千差万別なところがものづくりの魅力だと思っています。また、決して偉ぶるわけではありませんが、プロとしての技を持っていると、どんな立場の方とも対等にお付き合いできることでしょうか。

かわさきマスターに認定されて良かった点を教えて下さい

仕事の仲間はもちろんですが、近隣の方からお祝いの声をかけられて驚いています。家内も「ご主人ご立派ですね」と言われて、改めて「主人の凄さを感じた」と言ってくれました。私も今更ながら苦労させてきたことに感謝するとともに、多少なりとも恩返しができたかなと思います。また身内が自分の努力ぶりを見ていてくれるのは当然ですが、諸先輩の方々が同じように見てくれていていたことと、推薦がなかったら戴けなかったことを思うと今更ながら人のありがたさを痛感します。これからは先輩が示してくれたように後輩の励ましや育成に一層の努力をしたいと思っています。

後継者を育成するため、何に取り組まれていらっしゃいますか?

神奈川県東部職業技術校や平塚職業技術校で講師を務めています。様々な年齢の方々が内装工事に携るべく熱心に技術を習得していますので、私も気持ちを込めて教えています。私のところで仕事をしたいと希望する生徒も何人かおりました。これまでに、職業技術校以外も含めて、30人ほどを手元で指導して一人前に育てました。
近隣の臨港中学校の職業体験でも学校の先生や地域の方々と連携して、体験学習などを行っています。
ものづくりに携る若者が少しでも増えると良いなと願っています。
また、同業者組織の技能士会の中で研修会や講習会の機会に時機に応じたテーマでお話しさせていただいています。素材の特性や技術、お客様の接し方やマナー、事故の事例や防止対策など、自分の経験から伝えておきたいことを話すようにしています。
市民の方々の体験学習などのイベントにも積極的に参加するようにしています。

これから「ものづくり」を目指す方たちへアドバイスをお願いします

その人の基本的な要素として、先ずは明るさ、真面目さがあるかどうかを見ます。多くの若い人たちを見てきましたが、この要素を持った人は成長が速いし長続きし、成功しています。1人前になるためには基本的に、修行は最低3年間、とにかく一生懸命やることだと言っています。そうすれば下請けの仕事ができるようになり、そこから現場で人とのつながりと接し方が学べ、仕事の幅が広がり自分の可能性も見えてくるものです。
もう一点は、やはり母の教えになるのですが仕事を好きになること、好きになる努力をすることです。人でも同じことで好きになれば良いところが見えてきます。よい良いところが見えてくると楽しくなり、不思議に自分に自信が持てるようになるものです。
とにかく継続は力なり、真面目に真剣にやっていれば見ていてくれる人は必ずいて、道は開けるということを強調したいです。

最後にこれからの活動について教えてください

年来の意向がつい趣味の方向へ向かっていますが、本来の壁装の仕事で芸術性あふれるインテリア工芸の分野の仕事を目指したいと思っています。
また地元の業者として市民生活の向上に貢献できる仕事、とりわけ公共物件が受注出来る地力を業界全体でつけるよう努力したい。そのことによって業界全体が信用を深め経営基盤を強固にし、自負と誇りを持って携われる仕事にしたいと願っています。

壁紙素材を使った手作りのしおり。
壁紙素材を使った手作りのしおり。
どうもありがとうございました。
豊富な知識と豊かな発想を生かし、ここ数年、織物や壁紙、デザインシートなどの延長から、千代紙・切り絵・着物の生地・色々な和紙などを素材にして江戸風の粋な小物を作ったりもしているそうです。

川崎市の技能者や職人の皆様を紹介する映像番組「The 職人魂」でも、紹介されました。

【問合せ先】  
インテリアいはら


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