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かわさきマイスター紹介

時計技能士 飯嶋 義弘さん

アナログ式高級時計の複雑なメカに精通。時にはパーツ自作も

飯嶋義弘さんは、ロレックスなどスイスの高級時計に代表されるアナログ式時計の複雑な構造に精通した時計技能士です。パーツがない場合は自分で作るなどして動かなくなったものも見事によみがえらせる技術を持っています。これまで世界中のメーカーや時代を経た時計の修理に携わってきましたが、スイスなどで作られるローターで回す高級なゼンマイ時計は、「美術品のようなもの」だと飯嶋さんは言います。ロレックスなど、様々なアナログ式時計の複雑な構造を熟知し、その時計の故障箇所を的確に把握して分解、洗浄、組み立て、さらに破損・磨耗した部品の製作などもこなす技術と技能を持っている技能者です。
プロフィール
飯嶋 義弘( いいじま よしひろ) さん

岩手県出身。20歳の時に川崎で独立。その後も研鑽を重ね、高度な技能を修得。後継者の育成に熱心で、時計技術者の集まりの組織「日本時計研究会」で月1回講師を勤め、技術・技能の普及に努めている。
川崎区在住 飯嶋商会 経営
これは、飯嶋さんの技能を紹介する動画です。クリックしてご覧ください。

飯嶋さんについて教えてください

始めるきっかけは何でしたか?

地元の中学を出て東京へ。集団就職の第1陣でした。16歳の時でしたね。もともと岩手には親戚に時計屋があり、子どもの頃から修理を手伝ったりして時計には大変興味を持っていましたので、上京してすぐ時計店に弟子入りしました。今68歳ですから、もう50年以上の前の話ですね。この道一筋に、ここまでよく来たもんです。それも時計が心底好きだったからでしょう。

やっていて一番面白いと感じることは何ですか?

時計技能士になるには、認定試験に合格しなければなりません。
時計技能士になるには、認定試験に合格しなければなりません。
時計の部品機構は、メーカーごとにそれぞれ異なっているため、そのメカを解明し、工夫をしていくのが楽しいですね。ルーツはやはり若いころの体験です。18歳の時でしたが、東京都が時計技能士を創ろうということで試験がありまして、それを受けたところ、合格し経済局長賞をもらいました。合格率が30%位というかなり高度の試験でしたが、合格者の中では私が一番若かったようです。それが現在、都が実施している1級・2級時計技能士の始まりですかね。実際の試験は各時計メーカーで受けたのですが、パーツを壊して組み立てる実技や1日の誤差が30秒以内とか、ゼンマイ式だった当時としてはかなり厳しい基準をクリアしなければなりませんでした。この試験に合格すれば、一人前の職人として認められたのです。
高級腕時計の数々。
高級腕時計の数々。
その後、銀座の時計店で修行し、21歳でスイスの時計メーカーの下請けとして独立しました。そこでもやっぱり規格面で厳しい要求がありましたね。スイスの時計が今でも尊重されるの、そうした伝統的な流れがあるからなんでしょうね。

長年、継続して技能研鏡に努めることが出来たのはなぜですか?

飯嶋さん自慢の手づくり研磨機。
飯嶋さん自慢の手づくり研磨機。
いろいろな時計を見ているうちに、時計のメカは最高の芸術だと思うようになったからだと思います。機能的で美しく、やっているうちに職人の腕次第で、いくらでも時計の精度は上がるということに気づき、大げさに言えば、その技術に人生をかけたのです。腕を磨くには理論と技術が伴わないといけないので、ロレックスなどスイスの高級時計を中心に猛烈に勉強もしました。今から20年ほど前はクォーツなどが普及し、スイスの高級時計を直す人がいなくなったため、逆に注文が殺到しました。
それと自分で作業用の機械などを考案して作ってきたことも独自の技術力をあげるのにプラスしましたね。例えば時計のバンド側のくすんだ個所をピカピカに磨き上げることがありますが、これは高速の機械では対応できません。そこで、低速でもパワーの落ちない研磨機を開発しました。非常にシンプルで故障もせず、万能仕上機として重宝しています。ロレックス特有の金と銀の金属ベルトも、この自製の研磨機で本来の外観を損なわないよう丁寧に磨きます。

自分が誇れる、自信のある卓越した技能を教えてください

この手で複雑・精密な機械を修理します。
この手で複雑・精密な機械を修理します。
スイスのメーカーでさえ直しきれないことを、私はできます。なかなか動かない時計でも、ある部分に一番軽い油を差してやると動き出すという、ちょっとしたコツがあるのです。いろいろな職人と付き合っているうちに覚えた技能ですね。それと普通、名人といわれる技能者は「オレが一番」と、人の言うことを聞きませんが、私は素直に聞きますね。それが技能のプラスにつながっていると思います。

ものづくりについて教えてください

ものづくりの魅力を教えて下さい。

機械式時計の心臓部であるゼンマイを手に精密な仕掛けを説明する飯嶋さん。
機械式時計の心臓部であるゼンマイを手に精密な仕掛けを説明する飯嶋さん。
簡単に言うと「死んだ時計を生き返らせる」という醍醐味ですね。「これはどこへ持って行ったってダメだ」というのを元に直してしまうのですから、お客さんにしても大喜びなわけですよ。たいがい、そうした時計は持ち主にとっては大変思い出のある大事な品だということが多いですからね。たとえ直すのに何日かかるか分からない古い時計でも、預かった以上はプライドにかけても絶対直して見せるという意地があります。お客さんは「いくらでも出しますから」とおっしゃいますが、お金の問題ではありません。そのかわり「これは直らない」と判断したものは、最初から受け付けません。直るか直らないか、そこを見極めるのが技能の目ですね。

かわさきマスターに認定されて良かった点を教えて下さい

顕微鏡を使ってさらに細かい作業に挑みます。
顕微鏡を使ってさらに細かい作業に挑みます。
職人というのは何となく自己満足の世界に留まるという傾向が強く、やはりこうして何かのかたちで技術を認められるということは、最高の喜びです。いただい
た時は本当に涙が出るほど嬉しかったですね。これで堂々と出るところの出られるというか…。実際、テレビで紹介された後、「この時計直していただけます
か」といった注文など、あちこちからすごい反響があってびっくりしました。

後継者を育成するため、何に取り組まれていらっしゃいますか?

作業台の上には虫眼鏡やピンセットなど様々な道具が整然と並んでいます。
作業台の上には虫眼鏡やピンセットなど様々な道具が整然と並んでいます。
時計技術者の集まりの組織「日本時計研究会」という組織があり、そこで月1回講師を務め、技術・技能の普及に努めています。研究会には全国で80人位入っていますが親睦、時計技術の勉強、研鑽を目的に毎月例会を開き、時にはメーカーの人を読んだりして研修会を開いています。最近は若手の技術者も増えていますが、学校だけでは覚えきれないことも多く、そこは私たち現場経験の長いベテランが知恵を貸して指導に当たっているのです。深く時計技術を学びたいという若手時計技術者には、非常にためになる研究会ではないかと思います。

これから「ものづくり」を目指す方たちへアドバイスをお願いします

これで時刻を打つのです。
これで時刻を打つのです。
こだわりのない職人はダメですね。簡単なことでもこだわり続けて仕事をしていけば、難しいことも自然とできるようになるのです。その時その時の能力を振り絞って、目いっぱい努力することが大事だと思います。結果が出るのは20年30年先の話としても、その積み重ねです。時計職人で言えば、基本的には時計が好きでないと務まりませんね。最近は若い人で時計に関心を持つ人が増えていますから、この業界の前途は明るいと思っています。

最後に、これからの活動について教えて下さい。

私自身については、死ぬまでこの仕事を続けることですね。それと、機会があればもっと小・中学校で子どもたちに時計のことを教えていきたいですね。学校には機械式の古い大きな時計などが必ずあるはずで、メカを教えるいい教材が揃っていると思います。どうして時計は時を刻むのだろうとか、ゼンマイってなんだろうとか、実物を見て触ってみることで、子どもたちはきっとものづくりへの好奇心と大きな夢を膨らませていくに違いありません。

ありがとうございました。
クォーツに押され、今や時代遅れとも見られる機械式時計。しかし、希少価値と高級感から人気は急上昇。そしてゼンマイ一本で時を刻み続ける躯体の中には、時計づくりの長い歴史が凝縮されています。飯嶋さんは、その伝承人とも言えるでしょう。
【問合せ先】  
時計工房 飯嶋


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