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かわさきマイスター紹介

表具師 若林 近男さん

古い表具から現代のクロス貼りまで、幅広いジャンルをこなす熟練の技

表具師としての仕事の中でも、掛け軸や屏風などの修復は高度な技能が必要です。今回レポートする若林さんは絵が生きるように、生地選びから糊貼りなどに優れた技能を発揮しています。熟練した技能により、古い表具から現代のクロス貼りまで、正確で緻密な仕事をこなし、顧客から厚い信頼を得ています。技術校の講師を務め、後継者の指導にも積極的です。
プロフィール
若林 近男さん

地元の中学校卒業後上京。東京・駒方の経師屋で12年間修行。42年独立。46年川崎に移住。現在に至る。
幸区在住。若林表具店自営。
これは、若林さんの技能を紹介する動画です。クリックしてご覧ください。

若林さんについて教えてください

始めるきっかけは何でしたか?

上京した頃、知合いの経師屋から「やってみないか」と誘われ弟子入りしたのが始まりです。そこで12年ほど住み込みで修行し、30歳の時に独立しました。その後も研究会の仲間に入って腕を磨き、ここへ来てもう40年近くになります。途中、クリーニング店をやったり布団の綿工場で働いたこともありますが、最終的に経師屋に落ち着いたという感じですね。子どもの頃は田舎の家でふすま張りをしょっちゅう見ていたし、もともと手先も器用だったので、この仕事に向いていたのかもしれません。

やっていて一番面白いと感じることは何ですか?

ふすま張りの極意を語る若林さん。
ふすま張りの極意を語る若林さん。
やっぱり、ふすまなど張り替えたあと、お客さんに喜ばれる事ですね。建て付けが悪い時などは、カンナなどを使って、そこをまず直してから取りかかりますから、ぴったり納まるようになったと評判がいいです。良いふすまを作りたいですから、上張りのいい素材を使います。成し遂げた時の満足感は何物にも変えがたいですね。ただ、高度成長時代は仕事もたくさん来ましたが、今はこんな不景気だから様変わりというのが残念ですが…。
自宅2階の和室のふすまも手づくりです。
自宅2階の和室のふすまも手づくりです。
ふすま張りで難しいのは、ノリづけに使う糊を溶く時ですね。掛け棒や丸包丁を使って時間をかけ、じっくりと練っていきます。打ち刷毛を使って最後の仕上げをする時、このノリの良し悪しがものを言いますから、慎重に作業を進めなければなりません。ノリの調合はいろいろと研究します。
掛け軸は特に難しいです。経師屋の中でも最高の技術です。書画に合わせ幅とか寸法を考え、全体のバランスをとらなければなりません。上部と下部の余白は寸法がほぼ決まっており、定説どおりに仕上げないと様(さま)にならない完成品になってしまいます。格好のつかない掛け軸が床の間を飾ることになりますね。展示会に出す時は特に神経使います。同業者が良く見ていますから、変なのは出せません。

長年、継続して技能研鑽に努めることが出来たのはなぜですか?

ふすま張りを中心に、12年間夢中で技能を磨きました。
ふすま張りを中心に、12年間夢中で技能を磨きました。
見習いの頃はふすま張りを中心に、12年間夢中で技能を磨きました。表具師になるには大体このくらいの期間が必要です。逆にそれだけ長期間経験しないと一人前にはなれないということです。それが嫌なら仕事は覚えられません。親方は「見て覚えろ」と言いますが、親方の真似だけではダメで、自分で研究し工夫する気がないと上達しません。特に、掛け軸は研究が欠かせません。掛け軸専門の勉強会を開いたこともあります。今あるのも、これまでかけてきた時間と忍耐力、向上心の賜物だと思います。

苦労したことはありますか?

仕事場の壁には掛け軸と道具類がびっしりと並んでいます。
仕事場の壁には掛け軸と道具類がびっしりと並んでいます。
修行時代は親方が厳しく、物を投げられたり、ぶたれることはありませんでしたが、とにかく顔と言葉遣いが怖かったですね。1、2回の失敗は許されましたが、3回以上になるとすごく怒られます。駄目だと言われたことを何回も繰り返すようでは、もともと駄目なんですよ。雑な仕事ぶりが見つかってしまうと「こんなもの納められるか」と。それに冬場は今のように暖房もなく仕事場が寒くて、つらかったことを覚えています。仕事の面では、今でも古い墨書きの書画の修復などを頼まれた時は、どこまで裏打ちを剥いていったらいいのか苦労します。下手すれば品物が台無しになってしまうわけですから神経使います。

自分が誇れる、自信のある卓越した技能を教えてください

愛用の道具と、数々の表装を手がけてきた名人の手。
愛用の道具と、数々の表装を手がけてきた名人の手。
掛け軸、ふすま、屏風、額など表装全てに自信があります。なかでも修理・修復にかけては、誰にも負けない技術を持っていると自負しています。マイスターをいただいたきっかけも屏風の修復技術でしたし、修復は職人としての誇りです。怖くてできない表具師も多いですから、難しい技術です。掛け軸など修復を依頼される品物はお客さんにとっては何十年も大事に持っておられた宝物ですが、たいていは管理が悪いため相当痛んでいます。それが元通りになるんですから、そりゃ喜ばれますよ。掛け軸など掛けっぱなしは良くありませんから、お返しする時は保存の仕方まで教えます。掛け軸にぴったり合った生地を選ぶのもわれわれの技量ですね。

ものづくりについて教えてください

ものづくりの魅力を教えて下さい。

明り取りの障子。伝統的な日本の住まいの風情がだんだん薄れています。
明り取りの障子。伝統的な日本の住まいの風情がだんだん薄れています。
やっぱり仕事を成し遂げた時の満足感です。壁紙で言えば、柄物のつなぎ目を1枚1枚うまく合わせることが技術であり、ぴったりと貼り終わった時はホッとすると同時に、達成できたという高揚感とやりがいを覚えますね。昔は豪華な造りの家が多く、暖炉があったり内装には超一流の素材が使われ仕上げるのに神経を使いましたが、逆に職人としてのやりがいをいやがうえにも高めてくれましたね。そんな時は下貼りを2回ほど丁寧にしますが、今はビニールを貼るだけで終わってしまうことも多いです。

かわさきマスターに認定されて良かった点を教えて下さい

「ノリの下準備が仕上がりを左右します」と、若林さんは時間をかけて練ります。
「ノリの下準備が仕上がりを左右します」と、若林さんは時間をかけて練ります。
大会社から糊の扱い方で講師に呼ばれたり、新聞を見て新しいお客さんが来てくれたりとか、結構忙しくなりました。県の作品展の副理事長をやっていますが、マイスターになってから結構いい絵を張らさせていただく機会も増えました。表具店は今市内に50軒くらいありますが、作品展に出す人は少なくなりましたね。

後継者を育成するため、何に取り組まれていらっしゃいますか?

平成元年に技術高校を卒業した息子が後を継いでくれていますが、自分からその方面の専門学校に行きたいと言い出しましたから、小さい頃から親の背中を見て育ったのだと思います。ほかにも技術高を出た弟子が二人おり、息子を含め現在6人で仕事をこなしています。仲間の職人には定年後、学校で講師として後継者育成に当たっている人もおり、この世界もなんとか伝統が引き継がれていく雰囲気にはあると思います。私もかつて作品教室で講師をしたことがありますが。

これから「ものづくり」を目指す方たちへアドバイスをお願いします

一般の書店ではあまり見られない専門書がずらり。
一般の書店ではあまり見られない専門書がずらり。
その仕事をやり遂げる精神があるかどうかが大事だと思います。表具師になろうと思うなら、不器用ではダメです。適性もあると思いますし、趣味としてできるのもいいですね。それと昔のように、たった一人だけの親方について長く修行するのはもう時代遅れかもしれません。やはり研修会に参加したり作品展に出すなど、技術を磨くのに幅広い行動をとるのが必要なのではないでしょうか。「井の中の蛙」では駄目なんです。ただ学校を出て1年で出来る仕事ではありませんね。

最後に、これからの活動について教えて下さい。

経師屋として、やはり「ふすま」が一番のやりがいだそうです。
経師屋として、やはり「ふすま」が一番のやりがいだそうです。
お陰さまで、このところ仕事が立て込んでいまして大忙しです。新築の家の内装クロス張りなど、住宅メーカーからの注文が中心ですが、家内まで動員してこなしています。最近の不況も特に影響ないような感じですね。それと、やっぱり、ふすまが経師屋として一番のやりがいですから、これからもいいふすまを作っていきたいですね。

どうもありがとうございました。
最近は住環境の変化で床の間を見ることは少なくなりましたが、どんなに住まいが洋風化しても日本人にとって和室は安らぎをもたらす貴重な空間であることに変わりはありません。若林さんはそんな日本的な空間に和の伝統を甦らせる歴史の証人でもあります。
【問合せ先】  
若林表具店

■所在地      幸区古市場2―89
■電話    044-522-8933
■FAX     044-555-7876
■営業時間  8:00~18:00
■休み    日・祝