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かわさきマイスター紹介

金属ヘラ絞り 鍵屋 清作さん

金属ヘラ絞りは板金加工の一種で、円形状の金属盤を型にはめ、回転させながらヘラ棒で押さえて丸い立方体の製品をつくる技術です。むらを出さず、位置に注意しながらの作業は経験と勘に頼らざるをえず、高い熟練度が求められる仕事です。単品で少量かつ複雑なものをつくるには、このヘラ絞りの技術はなくてはならないもので、今回紹介する、この道50年の鍵屋清作さんは、会社にとって不可欠な人です。
プロフィール
鍵屋 清作さん

秋田県生まれ。36年、地元の中学卒業後、集団就職で上京。品川で、おじが社長を務めていた現・今野工業の前身に入社。その後、会社が等々力から川崎市へと移転するのに伴い移動。現在に至る。
かわさきマイスター平成12年度認定
高津区在住。(有)今野工業勤務。
これは、鍵屋さんの技能を紹介する動画です。クリックしてご覧ください。

鍵屋さんについて教えてください

始めるきっかけは何でしたか?

東京にあこがれ、上京しておじの会社に就職。そこでやっていたのが、たまたまヘラ絞りの仕事だったという単純な縁です。おじの工場で初めて見た時、これは面白いと思いました。100%、まだ手で回す時代でしたが、それからもう50年、この道一筋で歩んできました。

やっていて一番面白いと感じることは何ですか?

これがヘラ絞り機です。
これがヘラ絞り機です。
ヘラ絞りはプレスや溶接と違ってマニュアルがないので、ほとんど自分で考え工夫しながら、ものづくりができることです。作業改善など全部、自分で考え出していきます。素材も鉄、ステンレス、アルミ、真鍮、銅などいろいろありますが、材質によって絞り方に特徴があって、それぞれに異なる面白さがあります。また製品もアンテナや照明器具の反射板、灰皿、花器、各種パイプなど身近なものから、ボーリングのピン、カメラ部品、3次元加工品、ロケットの先端部分、お賽銭をあげる時に鳴らす「鈴」など、バラエティーに飛んでいて、つくっていて楽しいです。

長年、継続して技能研鑽に努めることが出来たのはなぜですか?

回転する金属にヘラ棒を押し付けて絞り込んでいきます。
回転する金属にヘラ棒を押し付けて絞り込んでいきます。
職場の先輩や後輩など、周りの協力があったからこそだと思います。時には同業他社の仲間から技術を教えてもらったこともあり、お互いに切磋琢磨しながらの積み重ねで、ここまで来られたと思います。分からないことは親方や先輩にすぐ聴く、という姿勢でやってきたのがよかったと思います。一時、他の仕事に目が向いたこともありますが、その時、親父がわざわざ上京してきて、「今のままが良い」と諭され、落ち着いたこともあります。仕事がそれだけ多かったせいもあるかも知れませんが、当時は朝の8時から夜の8時までの長時間労働だったので、夕方5時とか6時ごろには終わる他の職場がうらやましいかったのです。今思えば本当、ここに残っていて良かったと思います。

苦労したことはありますか?

金網状の製品もヘラ絞りで完成。
金網状の製品もヘラ絞りで完成。
ヘラ絞りの素材には鉄やアルミ、ステンレス、真鍮などいろいろあって、材料によってどうしても作業がうまくいかず、その日はあきらめて帰宅し、家で散々考えた結果、翌日工場でうまくいったということもあります。そうした試行錯誤の繰り返しです。なんとしてでもお客さんから注文を取るのが第一ですが、今は不景気ゆえに余計苦しいです。酒が飲めることが救いです。現在はステンレスも自由に扱えますが、当初は素材とし非常に硬いため絞るというイメージが湧かず、先輩に聞いたりステンレス用の工具をいろいろ考案したり、いろいろ勉強、工夫を重ねてなんとかヘラ絞りができるようになって、注文も取れるようになりました。「あれできません」「これできません」と言っていては、お客さん来てくれませんから、なんとか工夫して注文に応じられるように持っていくのがわれわれの仕事でしょうね。

自分が誇れる、自信のある卓越した技能を教えてください

大きなパラボナアンテナも鍵屋さんの得意分野。
大きなパラボナアンテナも鍵屋さんの得意分野。
現在職場には同僚が7人おり、それぞれに得意の分野を持っていますが、私は大型製品を一手に引き受けてつくっています。例えば1200㍉径の大型パラボラアンテナなど得意の分野です。この会社も以前は小型の製品だけをつくっていましたが、私が先代社長に頼んで大型の旋盤機械を導入してもらったのが、そもそもの始まりです。パラボラアンテナも始めた頃は結構注文が来ましたが、今はどこでもやるようになり往時ほどではありません。どんな素材を扱うにしろ、ヘラを脇に挟んだ時の感触で、素材の特徴や作業状況が分かります。自動機だとその辺の感触が湧きませんが、ヘラ絞りは手づくり感覚そのものが伝わりますから、まさに経験と勘に基づく職人の技量を発揮できる仕事です。単品で複雑な製品を小ロットでつくるのに適しています。

ものづくりについて教えてください

ものづくりの魅力を教えて下さい。

成型品を手に工程を説明する鍵屋さん。
成型品を手に工程を説明する鍵屋さん。
何もないところから、すばらしい一つの完成品が生まれることです。この金属ヘラ絞りで言えば、平板な素材に力強くヘラを当てることで丸く、あるいはナイーブに加工された様々な形の製品が出来上がっていく魅力ですね。幅広のアルミ板を丸く切り取って円盤状にした材料をヘラ絞り機にかけ、力いっぱい絞り込んで大きなアンテナをつくっていくのは爽快です。かと言えば、小さなスチール板を精密機器用のパーツに仕上げる繊細な作業もあります。

かわさきマスターに認定されて良かった点を教えて下さい

周りから一目置かれるようになったことと、マイスターがいるという点で会社にもプラスになっていると思います。そして、ものづくりの楽しさを一人でも多くの人に知ってもらうきっかけになればと思っています。イベントにも積極的に参加していきたいです。

後継者を育成するため、何に取り組まれていらっしゃいますか?

満身の力を込めて絞る鍵屋さん。
満身の力を込めて絞る鍵屋さん。
工場長として現場では私がいちばん年上ですが、今いる7人それぞれにヘラ絞りの腕をあげており、全員が後継者だと思っています。各々得意分野があり、これからもっともっと腕を磨いてもらって、私に続くマイスターを目指してほしいと思います。今後、学校に関係なく、ものをつくることが好きな人が入ってきてくれるのを待っています。

これから「ものづくり」を目指す方たちへアドバイスをお願いします

鍵屋さん愛用のヘラ絞りの押し棒。
鍵屋さん愛用のヘラ絞りの押し棒。
基本的には、ものづくりの好きな人が伸びると思います。今のところ学校にはヘラ絞りの専門コースはなく、技術はこうした工場の現場で実際にやってみて覚えるしかありませんね。普通、職人の世界は親方や先輩の背中を見て育ちますが、下積みとして何年か修行し、技能を覚えていくことになります。私も随分教えてもらいましたし、それが今ある自分の土台になっているのだと思っています。

最後に、これからの活動について教えて下さい。

NCの導入でヘラ絞りも一部機械化されるところが見られますが、やはり手絞りの良さにはかなわないと思いますので、100%自動化されることはないと思います。この伝統をいつまでも引き継いでいきたいと考えています。個人的なことではまず健康第一と考え、早寝早起きと休みの日には多摩川の堤防を2時間位歩きます。それとさっき言ったように、仕事がなくても晩酌は欠かせません。

どうもありがとうございました。
機械や工具類、材料などがところ狭ましと置かれた工場内で、鍵屋さんは大きなヘラ棒を脇に挟み、満身の力を込めてアルミ板を絞り込んでいきます。瞬間、機械と鍵屋さんは、一心同体の動きを見せ、アルミ板は徐々に美しい円盤状のフォルムに変形していきます。

川崎市の技能者や職人の皆様を紹介する映像番組「The 職人魂」でも、紹介されました。

【問合せ先】  
今野工業株式会社

■所在地   高津区下野毛2-14-18
■電話    044-811-7204~5
■FAX     044-811-6057
■営業時間  8:00~17:00
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