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かわさきマイスター紹介

和服洗い張り 小林 伸光さん

まじめな仕事で和服を新品以上に甦らせる

小林さんは、古くなった和服をほどいて洗い、新品同様に生き返らせる洗い張りの技能を持っています。特に、『伸子(しんし)張り』と呼ばれる手法を継承し、顧客から絶大なる信頼を得ています。
この道に入り約50年。リピーターの顧客も多いのですが、新しい顧客も4割あるそうです。口コミやインターネットで広まり、関東のみならず、大阪からの注文もあるなど、広域に渡っています。
プロフィール
小林 伸光(こばやし のぶみつ)さん

祖父の代に始まり、3代目を継承。16歳でこの世界に入り、同世代の交流を求めて夜間高校に入学、22歳で卒業。洗い張り、特に伸子張りの技能を継承する。生地を見極め、熟練の技を駆使し、新品以上の色艶に甦らせるように、日々まじめに取り組んでいる。
川崎市川崎区在住。港屋京染店を経営。平成14年度認定かわさきマイスター。
これは、小林さんの技能を紹介する動画です。クリックしてご覧ください。

小林さんについて教えてください

始めるきっかけは何でしたか?

初めから一人前になろうという気持ちがあったわけではなく、家業の人手が足りなかったので、自然に始めました。
8時半から仕事を始めて、お昼1時間休んで働き、夕食後にまた2時間働く。そんな生活が「これしかないのか」と嫌になり、抜け出して風に当たったこともありました。
いつの間にか、知らず知らずのうちに仕事に愛着を持つようになっていました。地味な仕事だけど、お客さんが喜んでくれることを何よりも大切に思います。
初代(祖父)の創業は藍染めでしたが、時代とともに形態が変わり、呉服を加工(汚れを落としてきれいにする等)をして販売するようになりました。いまは呉服の販売より加工に力を入れています。加工を専門とする店は少ないですね。

やっていて一番面白いと感じることは何ですか?

持ち込まれた和服を、元より何倍もよくしなければいけないのがこの仕事です。。それが、思った以上によくできたときに励みになります。
よくできたというのは、きれいになるだけではなく、新しいものと同じような艶が出てくるということです。

長年、継続して技能研鑽に努めることが出来たのはなぜですか? (他の道に行こうと思わなかったですか?)

他の道に行こうとは思いませんでした。
同業の同年代の仲間がいなかったのですが、青年部ができて参加するようになってから、世間が開けてきました。何十年も続き、いろいろ教えてもらうことができました。
仕事は、修行などで他に出たことはなく、ずっと父から教えてもらいました。この仕事はマニュアルがありません。やれと言われたことをやり続け、少しずつ覚えて行くので、いつ一人前になったかわかりません。先輩を見ながら学んでいくのみです。
感覚的には5~6年で半人前、10年で一人前でしょうか。到達点がはっきりと見えるわけではなく、勘の世界であり、経験の蓄積です。

苦労したことはありますか?

着物は色止めしてあるものなのですが、まれに色止めしてない場合があります。色止めしていないと、水につけたときに模様が全部出てしまい、色移りしてしまいます。目立たないところで試して、色止めしてあるかどうかを見極めます。
20代のときに、色止めしていない着物を水に入れてしまい、模様が落ちてしまったことがありました。お客さまがわかってくださって大事には至りませんでしたが、そういう失敗をして、大きな失敗にならないように歩んで来ました。

自分が誇れる、自信のある卓越した技能を教えてください

特にありませんが、強いて言えば、伸子張りでしょうか。
着物はほどいて、洗い張り用の中性洗剤を少し使って水洗いします。最初から最後まで、シワが寄らないように、丁寧な仕事が要求されます。
素材によって手法を変え、汚れを落としてきれいに仕上げていきます。
まじめな仕事をしていれば、伝わるものがあります。呉服屋さんに並んでいるのと同じように反物にしてお返ししますので、お客さまがびっくりする場合もあります。アイロンではなくて湯のしなど、専用の道具を使って仕上げていきます。
ご希望があれば、専属の仕立て屋さんで作り直す場合もあります。その場合も、洗い張りしてあればピシッと決まるのです。
まじめな、丁寧な仕事をするのはとても大切なことです。
難しい作業は日の一番当たる午前中に、繊細な物は一番仕事にしています。色の濃い物は時間が遅くなっても大丈夫です。
1週間くらい。何件か並行して進めます。洗うのに30分、ゆすいで乾かすのに半日(4時間)、機械にかけて翌日か翌々日という具合です。
ひとつにかかりっきりになるわけではありませんので、急ぎは受け付けず、余裕を持って持ってきてもらうことにしています。
1ヶ月は見てほしいですね。成人式などは仕立ての時間も考えて、前年の11月までにうちの工程が終わっていないといけません。ですから3ヵ月か、予定があればなるべく早く持ってきて頂いています。

ものづくりについて教えてください

ものづくりの魅力を教えてください

物が再生できるということです。近年エコと言いますが、着物こそ本当のエコだと思います。
江戸のエコは着物です。着物を着て、何度か洗い張りで再生し、穴が空いたらほころびをついで、ぼろになったら雑巾にして、後は燃やして灰になってこやしになる。最初から最後まで無駄がありません。

ここには、着物を使う職業の方のみならず、一般の方も来てくださいます。若い人からお年寄りまで、親子三代続いている方も。
礼装・訪問着・普段着などの種類はいろいろです。大島などの高級品や礼装など、難しいものもあります。

が、終わってしまうはずのものが、再生することで、何十年後かに娘や孫が着られるわけです。着物は誰かが着てくれればそれでいいのです。くすんだ色も、洗い張りによって、何の遜色もなく蘇ります。

かわさきマスターに認定されて良かった点を教えて下さい

知ってもらいにくいこの仕事を、広く知ってもらえたということが一番です。イベントに参加して作業を見てもらったときに、自分の思っている以上に、よかったと思う人がいるのは嬉しいです。
これからも行事があればなるべく出かけるようにしていきます。

後継者を育成するため、何に取り組まれていらっしゃいますか?

この道は、あまり高望みをしない性格がむいていると思います。すぐに先のことを考えて、能率を考えてしまうのではなく、この仕事をもとにして+アルファをどこに求めるかだと思うのです。娘ふたりは後を継ぎませんでした。弟子は、仕事だけではなく、人間性も教え、生活ができるようにしなければいけないので難しいですね。
職人というのは、右も左もわからないうちにその世界に入って、他のことに目をくれずに没頭することも必要だと思います。昔は食べるのが先だからそういう環境がありましたが、そういう時代ではありませんからね。

これから「ものづくり」を目指す方たちへアドバイスをお願いします

ひとつのことを継続して長く続けると、その道を卓越することになります。長く続けることで、他の人より先んじるのが大切です。
この仕事はすごく目立たない仕事なので、頑張るって気持ちがないと埋もれてしまいます。以前、中学校で職人技を披露したら喜んでくれました。ひとつのことをずっとやっていたから一人前になれた、という主旨で授業に呼ばれました。やはり継続することが大切なのだと思います。

最後にこれからの活動について教えてください

今の状態を続けていきたいと思います。
後継者が出てくればなおいいのですが。

どうもありがとうございました。
取材中にみえたお客さまが、再生した着物の生地を使って作ったというマフラーやバッグを見せてくださいました。シワになりにくく、軽く、通気性もいいので、非常に使い勝手がいいそうです。
小林さんが「エコ」とおっしゃるのに納得です。
【問合せ先】  
港屋京染店

■所在地   川崎区東門前1-10-14
■電話    044-266-3625
■FAX     045-266-3625
■営業時間  9:30~19:00
■休み    毎月3日・13日・23日
■HP          http://www.e-daishi.net/0442663625.htm