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かわさきマイスター紹介

椅子製造業 出井 明さん

基本を大事に積み上げた技術が美しいラインを生み出す

出井さんは椅子に張り生地を張る、椅子張りの名人。張り生地を強靭な握力で引っ張り、表面にしわやたるみが出ないように指先で微調整しながら張り、早く美しく仕上げます。家庭用・オフィス用・公共交通機関用と、あらゆる分野の椅子づくりに精通し、様々な椅子を試作・修理してきた豊富な経験を基に、仮張りをせずに直接仕上げる「一発勝負」の仕事でも、その腕前を遺憾なく発揮します。
プロフィール
出井 明(いでいあきら)さん

川崎区浜町出身。工業高校卒業後、自動車整備工を経て、1974年に株式会社キルト工芸に入社。名人と呼ばれた先代社長の最後の弟子として修業した。15年ほど量産の仕事をメインに腕を磨き、多品種少量生産の受注が多くなるにつれ、張り替えの仕事でも経験を積んできた。張り替えで蓄積したノウハウや知識を生かし、シンガポール航空の最新鋭機エアバスA380ビジネスクラスの座席や新幹線N700系運転席などの椅子張りを担当する一方で、名品といわれるクラシック椅子を製作当初の姿に復刻している。平成22年グッドデザイン賞受賞のキルト工芸オリジナル製品「FUJI 」と「OHASHI」にも卓越した技能を発揮した。平成22年度認定かわさきマイスター。
これは、井出さんの技能を紹介する動画です。クリックしてご覧ください。

出井さんについて教えてください

始めるきっかけは何でしたか?

子供の頃から、凧やゴム飛行機を作ったりと、図工が好きでした。自動車整備工になるぐらいだから、ものをつくることが夢だったんですね。入社のきっかけは、自動車整備工の仕事を辞めて職を探している時、母親がここで縫製をしていた関係で、よかったら来てみないか、と誘われて。入社してすぐ、今は亡くなられたある先輩に鍛えられました。厳しい方でしたが、そういう人がいるから、一歩でも近付けるように、と思いました。

やっていて一番面白いと感じることは何ですか?

タッカーを使って張り生地を留めていきます。
タッカーを使って張り生地を留めていきます。
型出し(張り生地を裁断・縫製し椅子に張って型を出す作業)しながら、頭を使うことが面白いですね。仕上がりに対して、布や皮の目がどちらを向いたらいいのか、上からか下からか、右からか左からかなど、いろいろと考えています。また、出来上がった時に、張り生地が収まるところに収まっているのが、椅子がすっきり見える条件です。ですから、ただ張ればいいというのではなく、やりながら、見えない部分と見える部分での収め方を変える。それひとつで仕上がりがきれいに見えます。
それに、張り替えを終えて、お客さんに喜ばれた時は嬉しいですね。ヴィンテージもので人気のある椅子を任せていただいた時は、ちょっと失敗しても大変なことになってしまうので。

長年、継続して技能研鑽に努めることが出来たのはなぜですか?(他の道に行こうと思わなかったですか?)

昔は量産で同じ仕事をずっとやっていましたが、最近はいろいろな椅子を作るようになって、同じ椅子でもノウハウが違う奥が深い仕事だからだと思います。作っても作っても、新しい技術が出てくる、というような。張り生地の素材もどんどん変わってきていますが、その素材によって、どんな風に張ったらいいのか、収めたらいいのか、張りの技術も変わってきます。例えば、今はウレタンが主流ですが、最近また新しい素材が出てきている。飛行機の座席であれば、燃えにくい素材を使っています。今思うと奥が深い仕事なので、辞めてどこかへ行こうと思ったことはないです。結婚が早かったので、家庭があるのとないのとでは、気楽さも違うかもしれません。

苦労したことはありますか?

昔は量産のために遅くまで仕事をしていたことが大変といえば大変でしたが、苦労というと思い付きません。張りに関しては、いろいろな仕事を手掛けてきたので、難しい注文でもなんとかなりますから。苦労というか、これまでで一番大変だったのは、初めて型出しをした時です。最初は何もわからないので、何度も駄目出しされて、一つひとつ乗り越えて。そこから学ぶこともいろいろとありました。一つずつ経験を積んでいく中で、前はあれで失敗したからと、次は失敗しないための段取りを考えるようになります。

自分が誇れる、自信のある卓越した技能を教えてください

やはり、古くなった椅子を新品同様にする張り替えが得意です。古い椅子を張り替えていると、以前の仕事が出てくるので、昔の技術が自分の身に付いて肉になります。そして、それが他の仕事にも役立ってきます。この椅子を一から作ってほしい、と注文された場合、張り生地の下ごしらえから入って型を出しますが、経験がないと、ぴしっと型が出ません。そうした技術も、張り替えの中で学んだようなものです。

ものづくりについて教えてください

ものづくりの魅力を教えてください

出来上がった時に満足できるものが作れることが、一番の魅力だと思います。なかなか100点を取れず、95点が多いんですよ。張り替えには自信がありますが、新規の型出しでは、失敗ではないにせよ、自分ではこうしたら良かった、と思うことがありますから。

かわさきマイスターに認定されて良かった点を教えてください

家族がとても喜んでくれて、集まってお祝いをしました。その他、取材を受けたり、連絡を取っていなかった人からもお祝いの言葉をいただいて嬉しかったです。いろいろな技術を持っていても、最後まで生かせない人もいるので、この年になるまで、元気でやってこれたことが良かったと思います。自分も元気で会社も元気でというのが一番ですね。

後継者を育成するため、何に取り組まれていらっしゃいますか?

私が所属する張りの部門には10人ぐらいがいて、20代、30代の若い人もいます。木工や椅子が好きで入社してくる人が多いですね。中には女性もいます。細かいところまで気が回るにはまだまだ、という人もいますが、ラインの中で流れているものに関してうるさく指導することはありません。見ていて、どうしてもうまくいかない時に、こうやるんだよ、と声を掛けています。椅子張り技能者の国家試験は職人歴5年から2級、10年から1級を受けられますが、会社では私の他、3人が1級を持っています。

これから「ものづくり」を目指す方たちへアドバイスをお願いします

卓越した技術が生み出すまっすぐで美しいライン。
卓越した技術が生み出すまっすぐで美しいライン。
要は「働く」ということなので、我慢しなければ駄目だと思います。昔は「石の上にも3年」と言いましたが、それが基本です。椅子張りでも、どうしても同じ仕事を1~2年やることになりますから、飽きないで続けられる人が一番向いていると思います。やっているうちに、だんだんと身に付いてきます。要は基本。どんなことでも、基本がしっかりしていないと、いい製品ができません。張り替えも、中身を基本通りにしっかり仕上げてしっかり張るということです。椅子張り技能者の試験には基礎が全部入っていますが、それが基本です。

最後にこれからの活動について教えてください

キルト工芸の社員なので、いろいろな仕事、新しい仕事ができたらいいと思います。飛行機の座席や新幹線の運転席を作るという仕事は初めてのことでしたが、それをクリアしたので、これからもどんどん新しい仕事をクリアしていきたいです。それが、別な仕事の受注にもつながっていきます。
背面から肘掛けにかけて一枚布の張りぐるみという高度な技術で作られた「OHASHI」。
背面から肘掛けにかけて一枚布の張りぐるみという高度な技術で作られた「OHASHI」。
富士山の稜線のような緩やかな曲線がすっぽりと背中を包み込み「FUJI 」。
富士山の稜線のような緩やかな曲線がすっぽりと背中を包み込み「FUJI 」。

どうもありがとうございました。
かわさきマイスターだけでなく、社内でもマイスターの称号をお持ちの出井さん。一つひとつの経験をおろそかにせず、その時に必要とされた技術を完全に自分のものにすることで、最先端の技能者になられたと感じました。一歩の重みを教わった気がします。

川崎市の技能者や職人の皆様を紹介する映像番組「The 職人魂」でも、紹介されました。

【問合せ先】
株式会社キルト工芸

■所在地   川崎区大川町8-5
■電話    044-333-1798 (代)
■FAX     044-366-1257
■営業時間  8:30~17:30
■休み    土・日・祝
■HP          http://www.kilt.co.jp/

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