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かわさきマイスター紹介

クリーニング 吉永 惠一さん

機械より早く美しいワイシャツ仕上げ

吉永さんはクリーニング業務全般、特にクリーニングの基本とされるワイシャツの洗浄、アイロンによる手仕上げに卓越した技術を持つ職人です。プレス機の使用が当たり前の時代、クリーニングの原点であるアイロン仕上げにこだわり、その優れた技術で多くの顧客の心をつかんでいます。ワイシャツを瞬く間にしわひとつなく仕上げてしまう、スピーディーかつ丁寧な熟練技は圧巻です。
プロフィール
吉永 惠一さん

中学卒業後、15歳で大田区のクリーニング店に住み込みで奉公。手仕事全盛の時代に5年間の修業を積み、クリーニング業務全般で高い技術を修得する。プレス機が普及し始めた頃、別のクリーニング店に移り、手仕上げで店一番の職人として一目置かれる存在に。その後、昭和40年に実家がある川崎市小田で独立。住宅街の店舗にもかかわらず、多くの顧客を獲得している。制限時間15分以内に2枚のワイシャツを仕上げる「全国ワイシャツ仕上げ競技大会」(2005年度)では、点数、所要時間とも歴代上位の成績で見事優勝し、その実力を証明した。平成22年度認定かわさきマイスター。
これは、吉永さんの技能を紹介する動画です。クリックしてご覧ください。

吉永さんについて教えてください

始めるきっかけは何でしたか?

熟練の技術が要求される「焼ごて」(熱アイロン)。
熟練の技術が要求される「焼ごて」(熱アイロン)。
15歳からクリーニング一筋で56年です。中学を卒業して、手に職を持ちたいと思っていたところ、いとこの紹介でクリーニング屋に住み込みで奉公することになりました。料理を作ったり、食べたりすることが好きなので、食べ物関係の商売もいいかなと思っていましたが、いとこが紹介してくれたのがたまたまクリーニング屋でした。それで、蒲田の親方のところで5年、それから別のクリーニング店で5年、その後、他のクリーニング店で10年間修業してから独立しました。

やっていて一番面白いと感じることは何ですか?

春の彼岸過ぎに、衣替えで仕事が忙しくなってくると嬉しいです。独立して46年間、目立たない住宅街の中で営業してきましたが、家族が食べていくだけの仕事があるのは、お客さんに技術を認めてもらっているからだと思います。仕事では他のクリーニング店に負けません。プレス機で仕上げる大手の方が安くていいという方もいますが、いいお客さんはちゃんと技術をわかってくれます。インターネットやテレビで見たと言って、わざわざ市外から来てくださるお客さんも何人かいらっしゃいますよ。

長年、継続して技能研鑽に努めることが出来たのはなぜですか?(他の道に行こうと思わなかったですか?)

アイロンの重さは約5キロ。全身の体重をしっかり乗せてプレスします。<br>
アイロンの重さは約5キロ。全身の体重をしっかり乗せてプレスします。
他のクリーニング店ではできないことができることが最高の喜びなので、やりがいがあります。例えば、今は何でもプレス機で押してしまいますが、モーニングの襟は本来は手仕事で、専用の小さな艶出しアイロンを使って丸めながら仕上げています。また、ワイシャツなどの折柄や何本も線が入った柄には、糊が入るように穴が開いているので、そこから糊をつけて仕上げます。機械で押して固くなっても、アイロンでないと上手に丸まらないんです。着物の袷はアイロンの蒸気の出し方で縮んだり、仕上がりが違ってくるので難しいですが、ちょっとした着物も全部やります。着物の時代は、少しの汚れは洗い張りに出さずに、ふ糊と竹ひごを使ってきれいにしていました。

木綿のブラウスやワンピースは特に技術を要します。ナイロンのアイロンがけは簡単ですが、木綿は絶対にごまかしが効かない。きちんとプレスしないと、きれいにしわが伸びません。

苦労したことはありますか?

最初の店での修業時代は、朝6時前に起きて、夜中の12時頃まで仕事をし、休みも月に2回しかありませんでした。最初はずっと洗い場で、1~2年経ってから、少しずつアイロンがけを任されるようになりました。立派な親方でしたが、その分、仕事に対して厳しくて、他のクリーニング屋とは全然違っていましたね。1月ぐらいで止めていく人ばかりで、5年も勤めたのは私の他に2、3人です。でも、そこで修行したから、今があると思います。親方はほとんど教えなかったので、先輩や親方の仕事を見て、盗んで仕事を覚えました。そこに奉公してから数年後にプレス機が入ってきた時代で、アイロンのかけ方が一番勉強になりました。親方からは5年間で、「お前だったら大丈夫だ」と認めてもらいました。次の職場は前より人数が多くて、年は若かったんですが、同僚より技術が進んでいたので、仕上げは一番に見られていました。独立してから、お客さんから仕上げについて苦情を言われたことは一度もありません。

自分が誇れる、自信のある卓越した技能を教えてください

しわひとつなく仕上げて折り畳まれたワイシャツ。
しわひとつなく仕上げて折り畳まれたワイシャツ。
ワイシャツの仕上げでは誰にも負けません。どこで働いても、自分の上をいく人はいない、と思いました。仕上がりにしわがなく、ぴしっとしていて、早い。他の人が2枚仕上げるうちに、3枚仕上げます。どこで見ても、早く仕上げる人は上手。のろのろと何回もこすっていると、糊がだめになって「逃げて」しまいます。ワイシャツだけでなく、背広の仕上げでも右に出る人はいません。テーラードスーツはアイロンのかけ方で仕上がりが全然違います。既製品のスーツは仕上げが簡単ですが、テーラードの背広はそうはいかないので、いい背広がくると嬉しくなります。ワイシャツも背広も、一番大切なのは襟にきちんとアイロンをかけること。今は形状記憶のワイシャツや撥水加工を施した背広が出てきて、クリーニング屋の技術が萎えてしまう。ですから、仕上げは私の技術なんだと、こうした製品には無関心でいます。私自身、既製品は着ません。
「全国ワイシャツ仕上げ競技大会」の表彰状。
「全国ワイシャツ仕上げ競技大会」の表彰状。
「全国ワイシャツ仕上げ競技大会」へ出場した時も、アイロンがけでは誰にも負けないと思っていたので、絶対の自信がありました。それで、練習もしないでそのまま出て、優勝しました。

サーモスタットが付いたアイロンは、一度セットしておけば、それ以上温度が上がることはありませんが、「焼ごて」(熱アイロン)と呼ばれている普通のアイロンはどんどん温度が上がります。重さが5キロぐらいありますが、温度を入れているとよく滑り、入れていないと重い。ベテランは200度ぐらいが早く仕上げられてベストですが、この温度で下手な人がもたもたやっていると、焦げてしまいます。

ものづくりについて教えてください

ものづくりの魅力を教えてください

機械に頼らず、自分の手でやるからこそ、手仕事はすばらしいと思います。アイロンがけも、手仕事でやれば、機械でやるよりいい仕上がりになる。大量生産のものとは違います。ベテランになれば、時間もかかりません。機械は結局、何工程もあって人の手間がかかりますが、職人はひとつの仕事に集中できるので、仕事がはかどります。大手のクリーニング屋さんに「木綿のワイシャツは1時間に20枚、テトロンなら30枚仕上げられる」と言ったら、「機械より早いですね」とびっくりしていました。

かわさきマイスターに認定されて良かった点を教えてください

クリーニング業では神奈川県で3人目で、人がいただけないようなものをいただけて、最高に嬉しいです。元気な限り、ずっと仕事を続けていこうと思っているので、励みにもなります。

後継者を育成するため、何に取り組まれていらっしゃいますか?

サーモスタット付きのアイロン。
サーモスタット付きのアイロン。
神奈川県クリーニング生活衛生同業組合の「クリーニング学院」の講師として、クリーニング業を目指す人たちに実技の基礎を教えています。生徒は跡継ぎが多くて、最近は女性が増えています。クリーニング師の免許を取るには親では教えられない試験のコツがありますが、学院は半年間で実技を教えています。また、学院とは別に、頼まれると、仕事が終わった後、店で試験のポイントを教えています。ここで私が教えた人はみんな、試験に合格しました。

これから「ものづくり」を目指す方たちへアドバイスをお願いします

機械ではなく、手仕上げで一つひとつ経験を積み重ねていくことです。人から教えてもらうばかりでなく、自分で努力しなければ、いい仕事はできません。どんな職業でも同じですが、ひとつのことを目指したら、あきらめずにそれに向かって我慢をしないといけない。辛抱、我慢がなかったら、上には行けません。これは今も昔も同じで、今でも一生懸命努力している若者は大勢います。辛抱すれば、将来、大物になるかもしれません。

最後にこれからの活動について教えてください

近所の大工さんに特注したひのきのアイロン台。持ち運びしやすいように台は2枚に分かれています。
近所の大工さんに特注したひのきのアイロン台。持ち運びしやすいように台は2枚に分かれています。
クリーニングの技術を一般の人へ教えたいと思っています。障害者への職業訓練もやりたいです。出かけて行って教えられるように、マイスター認定後、すぐに持ち運びができるアイロン台を特注しました。

どうもありがとうございました。
日頃から若手を指導するだけでなく、マイスター認定直後に携帯用のアイロン台を作るなど、クリーニングの手仕事を次代へ残したい、という強い思いが伝わってきた吉永さん。町の匠として、かわさきマイスターとして、今後ますますのご活躍が期待されます。

川崎市の技能者や職人の皆様を紹介する映像番組「The 職人魂」でも、紹介されました。

【問合せ先】
吉永クリーニング

■所在地   川崎市川崎区小田2-7-5
■電話    044-333-1782
■FAX     044-333-1782
■営業時間  8:00~19:00
■休み    日・祝   
※吉永さんの「吉」は「土」の下に「口」

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