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かわさきマイスター紹介

機械設計・製作 伊藤 直義さん

どうしたら作れるかを考えている時が一番楽しい

伊藤さんは高度に分業化、機能化が進んだ工業生産の世界で、これまで数百種の機械を設計・製作してきました。機械、電気、化学などの知識と豊富な経験、創意工夫を源に新製品を次々と開発。よそで作れない難しい注文を任されることもありますが、これまで顧客に「出来る」と言って出来なかったものはない、という頼もしいマイスターです。
プロフィール
伊藤 直義さん

工業高校卒業後、大手電機メーカーに就職。5年間、水力発電の水車設計に従事し、設計の基礎や工業規格の知識などを修得する。その後、昭和58年に有限会社伊藤工業を設立。機械・装置の設計、製造、開発、修理、改造など機械に関するあらゆる仕事を請け負っている。全自動の粘度測定器や部品の寸法を測定する生産設備、ビニールハウスで使用する農業用作業車、水中の光合成測定器、カエルの足の筋出力測定器、シャボン玉発生装置など、多種多様な製品を開発。教育分野では、横浜国立大学と世界初のスパイラルモータを共同開発した。山登り、ヨットと趣味も幅広く、自作の大型ヨットで沖縄の海を航海したことも。高津区野川在住。平成22年度かわさきマイスター認定。
これは、伊藤さんの技能を紹介する動画です。クリックしてご覧ください。

伊藤さんについて教えてください

始めるきっかけは何でしたか?

円板・円筒体につけた刃を回転させて切削する機械「フライス」<br>
円板・円筒体につけた刃を回転させて切削する機械「フライス」
高校を卒業して就職した会社で水力発電所の水車の設計をしていましたが、頭を使った方がいいと、短大の夜学に通い出しました。専攻は販売。何でも気になることをやってみたい、という自分の癖ですね。仕事がだいたいわかってきた頃、別の土俵を求めて会社を辞め、夜学で知り合った方の紹介で火災報知器の工事の仕事を始めて、やがて防災会社を設立しました。しかし、やはり、自分の性に合わないので、もういいだろう、と。そして、人に使われずにある程度自分のスタンスを保てることはこれしかない、自分の考えやアイディアで機械や装置を作る仕事をしようと、この仕事を始めました。工業高校出身なので、最初は友達の会社を回って、何かやらせてくれと頼み込んで。当時は電気部品の生産が伸びていく時代だったので、巻線機を作ったり、レコード製造のプレス機を作る仕事をさせてもらったり。そうやって知り合いから次々と仕事を頼まれるようになって、今があります。

やっていて一番面白いと感じることは何ですか?

ごくわずかな長さや変位を精密に測るための計器「ダイヤルケージ」<br>
ごくわずかな長さや変位を精密に測るための計器「ダイヤルケージ」
最初にお客さんと打ち合わせをしながら、どうしたら作れるかを考えている時が一番楽しいですね。「こうすれば、できる」みたいな。こういうものが欲しいと言われると、頭の中で構想を立てて、あの部品とあの部品を組み合わせてこういう制御をかけて、といった概略が浮かんでくるんです。それを細かく調べあげて、使えない部品を入れ換えたりしながら図面を仕上げていきます。例えば、扇風機の羽に車のエンジンがついていたら、オートバイぐらいのエンジンに換えなくてはいけないけれど、それが小さすぎても無理ですよね。寝床の中とか空いている時間に、機械を頭の中でぐるぐる運転させ、その作業をえんえんと繰り返します。そうやって大幅に修正を加え、修正が終わって、これでいけそうだという確認がとれたら、図面に描いていきます。あとはルーティン作業ですが、やらないと仕方がない。そして、最後に組み立てて動かした時は、また面白いなと思います。

長年、継続して技能研鑽に努めることが出来たのはなぜですか?(他の道に行こうと思わなかったですか?)

次から次へと違うものを作ってきて、自分の性格にも合っていました。また、お客さん同士の口コミで仕事を依頼されることが多かったので、ほとんど営業に歩いたことはなく、気が付いたらこの年になっていました。機械製作が好きで、自分が思うままにやってきて楽しかったので、他に転身しようと考えたことはなかったですね。

苦労したことはありますか?

伊藤さんが改造した、モーターと電子機器を使った超低速の穴あけ機<br>
伊藤さんが改造した、モーターと電子機器を使った超低速の穴あけ機
好きなことをやっているわけですから、納期に追われることぐらいです。これを作ってほしいと言われて、作れる確証のないものは安易に引き受けません。図面を引き、この部品を使ってと考えても、その部品をどこで作ってもらえるかわからなければ、絵に描いた餅になってしまう。技術があっても機械は自分ひとりでは作れないので、外注さんなどの周辺環境を含めてすごく広く想定し、9割程度のめどが立ってから引き受けます。

自分が誇れる、自信のある卓越した技能を教えてください

旋盤でプラスチックの部品作り
旋盤でプラスチックの部品作り
やはり、動く機械ですね。塔のような構造物より、動いて何か仕事をするものが好きです。石を割る、餅をつく、肉に串を刺すとか。例えば、水中で光合成を測る機械は、特殊なクレーンを作って、それが水を撹拌しながらメーターごとに下がっていき、入ってくる光をセンサーが連続的に測る仕組みです。
ブレーキ設計をやっている人は、ブレーキについては非常に詳しくても、それを走らせることまではわからない。たったひとつの要素でできている機械はないので、総合的に整理できないとものは作れません。自分はブレーキの設計をやっていても、しばらくすると駆動系はどうなっているんだろうとか、他のことが気になってくる。そして、気になったことはやってみたいし、どうせやるんだったら一生懸命やった方がいい。そうやってある程度の幅があるので、他で作れなかったものでも作れるんだと思います。
機械製作では、ねじならねじ、モーターならモーターなど、個々の要素に対する理解が大事です。細かいことではなく、弱点や長所といった特性を知る。そして、基本構成をどうするか。野外で動く機械だったら、エンジン燃料を主体に設計しなければいけないし、屋内で使う機械なら、逆に廃棄物が出ないように排気を考え、電気を使うように設計する。こうした基本コンセプトをある程度押さえなければいけない。後は部品個々の組み合わせで、相性がいいか悪いかを見極めながら全体のバランスをとる。例えば、90%の機械を作ろうと思っても40%の部品が入ってしまったら、その機械の総合力は40%。ですから、機械では全体のバランスがすごく大切ですね。

ものづくりについて教えてください

ものづくりの魅力を教えてください

粘度測定器の組み立て。ゆるいと液が漏れてしまい、締めすぎても具合が悪いので、締め具合に気を遣います<br>
粘度測定器の組み立て。ゆるいと液が漏れてしまい、締めすぎても具合が悪いので、締め具合に気を遣います
頭の中で考えたものが実現して、目の前で動いてくれることです。例えば、自動でおはぎを作る機械を考えるとする。もち米を蒸す、蒸し上がったら臼で搗く、小豆を洗って煮るなど、たくさんの工程がありますが、最後に丸めたもちにどうやって小豆をつけるか。広げたあんこの中にもちを入れるとか、いろいろと方法を考える。そうやって考えたものが実際に出来上がって、動いてくれたら、「こいついいやつだな、ちゃんと動いているな」と思えるところが、面白いですね。
子供の頃からものづくりが好きで、小学校3年生ぐらいの時には、木片に釘を打って糸を巻き、工作屋さんで売っていたゴムで巻いたペラをつけたり、竹ひごや焼き鳥の串なんかに帆を張って、走らせる船を作っていました。もっと小さい頃は時計を分解したり。それから、学校の行き帰りには、風呂桶屋さんや大工さんなど職人さんの仕事をよく見ていましたね。屋根に瓦を張っている人がいれば、上から張るかな、下から張るかなとか、上手い人と下手な人がいるなとか。見ていて気になったことがあったら、それを見逃さない、なぜそうなのかと自分で判断することが大事です。
機械は一日見ていても飽きません。見る度に、やっていること、気になるところが違う。例えば、箇所によってスピードが違うとか、削り方が気になって、見ているうちになぜそうやって削っているのか、意味がわかってくる。特に量産でものを作っている会社の機械はかなり能率的なので、単純なアイディアだけで考えて動かしている機械とは違います。

かわさきマイスターに認定されて良かった点を教えてください

他のマイスターを初め、いろいろな方と知り合ううちに、自分にもやれること、やらなければいけないことがあるんじゃないかと考えるようになりました。今までお世話になってきた周りの人や、社会の人へ、何かできることを考えていかなければいけないなと。そう思えるようになって、自分が変われたことが一番良かったと思います。これを機会に一皮剥けたらいいですね。

後継者を育成するため、何に取り組まれていらっしゃいますか?

自分の趣味のものを作るのと、お客さんに渡すものを作るのでは、だいぶ感覚が違います。今働いてくれている人へは、仕事でも仕事と関係がなくても、聞かれて私がわかることは全部オープンにしています。若い人へ自分の技術を伝えることには全く抵抗がありません。

これから「ものづくり」を目指す方たちへアドバイスをお願いします

たくさんの機械や工具が並ぶ工場内
たくさんの機械や工具が並ぶ工場内
まずはいろいろなものを作ってみること。その時、例えば、モーターとはこういうものかと、壊したり改造したりしながら、部品ひとつずつに対して自分で考えて自分なりの感覚をつかんでいく。結果ではなく、その前の段階から理解していくことです。そして、何事も投入した時間が多いほど理解や財産が増えてくるので、とにかく何でも気になることに接していること。すぐに止めてしまったら意味がないので、必死でなくてもいいんです。頭の中で10年思い続けていれば、たいていのことは叶います。

最後にこれからの活動について教えてください

工場の前でメダカ(奥)とヤマユリを育てていました
工場の前でメダカ(奥)とヤマユリを育てていました
小・中学生のために蒸気のすばらしさをわかってもらえるような蒸気エンジンのキットを作りたいです。何かを教えて知識で終わってしまったらそれまでなので、水の力、風の力など、いろいろなものに対する自分なりの感覚や、疑問に対して自分で判断して何かやってみようという方向性を持ってほしい。その中から将来、ものづくりに進んでいく人がいたり、昔こんなことを言っていた人がいたな、と少しでも記憶に残っていたら、嬉しいですね。

とにかくものづくりが好きで、趣味で家一軒を建ててしまったこともあるという伊藤さん。山と海をこよなく愛し、工場の前ではメダカや山ユリを育てたりと、生活のあらゆる場面で自分の「気になること」を見つけ、楽しんでいらっしゃると感じました。そんな好奇心こそ、アイディアの源なのかもしれません。
2階が事務所、1階が工場です
2階が事務所、1階が工場です
伊藤さんが経営する会社は

有限会社 伊藤工業

■住所   川崎市高津区野川3730-6
■電話番号 044-766-5111
■FAX番号  044-766-8391
■HP   http://www1.odn.ne.jp/~koujin/

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