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かわさきマイスター紹介

食品サンプル 田中 司好さん

見る人を「アッ」と驚かせるサンプルづくり

型に流して成型したビニールに着色して作る食品サンプルの世界で、田中さんはどんな食べ物でも、本物を見ずに色や形をリアルに再現できる最高峰の腕前を持っています。20年以上の経験が必要で、特に難しいと言われる生魚でも、卓越した技術を発揮。リアルなだけでなく、「いかに美味しく見えるか」に徹底的にこだわる田中さんのサンプルは、見る人の心を楽しくさせます。
プロフィール
田中 司好(たなかしこう)さん

二十歳で親戚が経営する食品サンプル会社に就職して修業を積む。その後、同業の別会社で高度経済成長期の大増産を経験し、さらに腕を磨く。昭和45年の大阪万博では、制作した鯛が会場を飾った。昭和48年に独立し、有限会社つかさサンプルを創業。その高い技術は雑誌やテレビなど各メディアからも注目を集めている。小・中学生対象の「ものづくり体験教室」や見学会も頻繁に開いており、リアルで食欲をそそるサンプルは子供たちからも大人気。平成21年度認定かわさきマイスター。
これは、田中さんの技能を紹介する動画です。クリックしてご覧ください。

田中さんについて教えてください

始めるきっかけは何でしたか?

中学1年生の時に、食品サンプルを作っていた親戚が実家にのり巻きのサンプルを持ってきて、その人から「こんな職業だが、やってみないか」と誘われました。食糧難の時代で、そういう職業があるということ自体がすごく珍しかったですね。それから少し経って、先輩が焼きもちのサンプルを持って来てくれて、それがうまく出来ていた。そんなことで興味を持つようになって、二十歳でこの世界に入りました。子供の頃から割合と器用で、自転車を解体したり、家にある絵を写生したりと、ものづくりに興味があったので、この職業に引かれたんだと思います。

やっていて一番面白いと感じることは何ですか?

人から「アッ」と驚かれたり、「美味しそう」と言われたり、褒められることが魅力のひとつです。長年やっていると、何十年も付き合いがあるコック長や親方が、どんなサンプルがほしいかは私がよく知っているから、と言って任せてくれます。それぐらいの信頼関係になると、得意先が移動するようなことはありません。中には東京オリンピックの頃から続いているお客さんもいます。

長年、継続して技能研鑽に努めることが出来たのはなぜですか?(他の道に行こうと思わなかったですか?)

ずっと順調にきたので、他の道に行くことは全然考えませんでした。バブル景気があったのも、ラッキーでしたね。当時は100点満点中、70点程度の品物でも納品できる大量生産の時代。その頃は蒲田の食品サンプル会社にいたんですが、業績は絶好調でした。それに、食品サンプルを作る会社は少ないので、得意先があまり浮気しないという面もあります。今、川崎市で食品サンプルを作っているのは、私の所だけです。自分自身も真面目に仕事をこなしてきたので、今があるのではないでしょうか。

苦労したことはありますか?

新商品が出た時は技術的に苦労しました。昔は固定の食品ばかり作っていたので、技術的にこだわることはなかったんです。例えば、カイワレが一般的に出回るようになった時は、葉っぱの形を作ることが難しかったです。20年ほど前に材料がパラフィン(ロウ)からビニールになって、造花以外は何でも作れるようになりました。パラフィンは熱に弱くてもろいので、それまでは毛ガニの毛なんて折れてしまって作ることができませんでした。一番苦戦したのはアイスクリームで、デッシャーですくった感じがなかなか出ない。思いつきでパラフィンに塩を入れてみたら、やっとできた。今はビニールで簡単に作れますが、あれは傑作でしたね。
美味しそうなとんかつ。衣は実物より明るくからっとした色に仕上げるのが秘けつだそうです。
美味しそうなとんかつ。衣は実物より明るくからっとした色に仕上げるのが秘けつだそうです。
また、苦労と言うか、食品サンプルではスープの高さが5ミリ違っているだけで、作り直しになります。例えば、ラーメンのどんぶりの上から2、5センチの所にスープを張ってくださいと注文され、たまたま3センチになってしまったらもう直しです。まずは「盛り」が大事で、何センチという指定がある時は、その通りに作らないとだめ。そして、出来上がった時点で美味しそうであること。そのためには、本物の色そのままに作ってもだめです。私はどちらかと言えば、盛りの高さより、美味しそうであるかどうかを優先したいんですが、お客さんの注文に応えなくてはいけないので、難しいですね。

自分が誇れる、自信のある卓越した技能を教えてください

魚の鱗は面相筆で一枚一枚、線を描いて再現します。
魚の鱗は面相筆で一枚一枚、線を描いて再現します。
生魚と和食です。前の会社にいた頃から生魚を作っていたので、我々の年代の職人は「田中が一番うまいよ」と言ってくれます。魚の目ひとつとっても、きんきは丸いんですが、たいていは真ん丸ではなく、端の形が少し違う。ひれに少し血が滲んでいる様子なども再現します。また、同じ魚でも産地によって色や模様が違います。

大阪万博の時は、私が和食を担当していてたまたま鯛を作ったんですが、それで「田中といえば鯛」というイメージを持たれるようになったのかもしれません。あれは1メートルもある見事な鯛でしたが、今の材料を使えば、もっとリアルに作ることができます。サンプルの表面を「面」と言いますが、今では鱗が一枚一枚入った面がきれいに出るので、そこに面相筆で鱗の線を描いていきます。難しいのは光沢や目の感じです。鯛は目の横に光った部分がありますが、その位置や太さをはっきり覚えていないとリアルに作れません。色も、鯛の種類によって黒っぽいとか赤いとかいろいろな色があります。

ものづくりについて教えてください

ものづくりの魅力を教えてください

パフェの生クリームはシリコンを流し入れます。
パフェの生クリームはシリコンを流し入れます。
人からだめだと言われても、自分ではすごくうまくできたと思う時があるんですが、自分なりのものが作れるとすごく楽しいですね。1年にかなりの数のサンプルを作りますが、気に入るのはたったの1、2個しかありません。それには着色している時に筆が思うように動いてくれたという喜びもあります。自分がすごく気に入ったものをお店からだめだと言われたら、お店の人が見て美味しそうでなかったからだと、自分なりに納得するんです。ですから、自分でかっこ良くできたと思ったものが、人にも喜んでいただけたら、満足ですね。

かわさきマイスターに認定されて良かった点を教えてください

認定されてまだ1年ですが、徐々にいろいろな所から注文が入ったり、こういうものは作れないかという問い合わせが増えてきました。取材も多くなりましたね。

後継者を育成するため、何に取り組まれていらっしゃいますか?

息子が後を継いでくれました。この職業は人の仕事を見て覚えるしかありません。色を作るにも、これだけの量を作るにはどのぐらいずつ色を混ぜるといったレシピはありません。だから、先輩のやることをよく見ていて真似するしかない。私たち世代も、昔から「作るところをよく見ておけ」と言われました。
食品別に調合した色絵の具。
食品別に調合した色絵の具。
作業所の引き出しにはこれまでに作った型が納められています。
作業所の引き出しにはこれまでに作った型が納められています。

これから「ものづくり」を目指す方たちへアドバイスをお願いします

材料に付着した空気の泡をとる脱泡機。
材料に付着した空気の泡をとる脱泡機。
一にも二にも研究です。食べ物をよく見ること。毎日、食べる前に見る。私は幸い、北部市場が近いので、難しい注文で色がわからない時などに見に行きます。デパートの食品売り場もよく見て回ります。ずっと眺めてから、戻って来てまた見るんです。細かいことを言えば、ごま一粒でも色がすべて違います。ごまは両面テープに一粒ずつ立てて並べ、そこへシリコンを流して型をとるんですよ。

本物だけでなく、食品サンプルもよく観察します。あまり真剣になって見入るので、たまに眼鏡をかけていることを忘れて、ウインドウのガラスに眼鏡がぶつかるほどです。余所で作ったサンプルでも、50個あれば、必ず1、2箇所は真似てみたいと気に入る部分があります。例えば、ステーキの真ん中の部分がちょっと赤いだけで、すごくリアルに見えます。コハダも点ひとつで違ってくる。単なる点ではないんです。それをどのサンプルが一番上手に描いてあるかなと、職業柄、自然と興味が湧きます。

最後にこれからの活動について教えてください

今は飲食関係が主ですが、これからはお中元やお歳暮などの贈答品、お土産用の焼き菓子、バレンタインデーのチョコレートなど、飲食関係とは違った分野の食品も手掛けていきたいです。そういった商品は今、すべてサンプルです。例えば、バレンタインデーのチョコレートの場合、毎年、箱の中の数種類を入れ替えて、別の店舗のサンプルと交換しています。昔は食堂のサンプル一本で、こういうサンプルを作ることは全くなかったので、仕事の範囲は広くなってきました。

どうもありがとうございました。
大切なのは巧拙ではなく、自分なりのものが出来ること、と語る田中さんはものづくりの喜びを知るマイスターです。そんな田中さんが作るサンプルは、単なる食品の模倣ではありません。人を「アッ」と言わせたい、という創意工夫が、見る人を感動させます。

川崎市の技能者や職人の皆様を紹介する映像番組「The 職人魂」でも、紹介されました。

【お問合せ】
有限会社 つかさサンプル

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■電話    044-976-0828
■FAX     044-976-7851
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